ブランドを確立するためには「自分は、誰に、どう見られたいのか」を決定する必要があります。
依頼人相談者からどう見られ、どう感じて欲しいのかを決めるブランドアイデンティティーを明確にするのです。

ブランディングの要素である「市場」「ターゲティング」「ポジショニング」を具体的に明確化して行きます。

1.市場(業務の特化)

ブランドが確立されたと言えるのは「○○の事なら□□さん」と思い浮かべてもらえるようになった時でしょう。「○○の事なら」になるには、最低○○を決定しなければなりません。○○を決定するという事は、○○のスペシャリストになるという事です。
例えば○○を離婚訴訟とすれば、「離婚訴訟のスペシャリスト」になるという事になります。スペシャリストに見られれば、相談依頼者から選ばれ易くなります。ただ単に「□□弁護士」というより「離婚訴訟のスペシャリスト□□弁護士」の方が、離婚について相談したい人は、選び易いでしょう。
しかし、この市場を考えるうえで、いくつか注意しなければならない点があります。
例えば、自分は離婚訴訟が得意だからといって、簡単に「離婚訴訟のスペシャリスト」を名乗ったとしても、全国を見ればライバルはたくさんいます。ここでは絞込みが必要になります。つまり全国でブランドにならなくても、特定地域でブランドになるというような考えも必要になります。
また、社会的状況や経済状況も考慮しなければならない場合もあります。今の人口動態を考えてみても、少子化高齢化で相続問題は、需要が増えるでしょう。
このように、様々な要因を考慮してブランディングする必要があるのです。

2.ターゲティング

相談依頼者として、どんな人を対象にするのか決定する必要があります。市場を決めたら、更に対象となる人物像を絞ることをしなければなりません。
例えば、漠然と離婚について相談したい人というのではなく、子育て真っ最中の人が離婚するのと年金をもらうような人の熟年離婚では、相談内容等に違いがあるのではないですか?
つまり特定の基準となる項目を決める訳です。子育て中と熟年なら、年代とかライフスタイルという項目になるのかも知れません。
次に、決めた対象者の属性を基に、具体的な人物像を描き出します。ペルソナを設定するのです。
ペルソナとは象徴となる架空の人物像です。ペルソナでは、年齢、職業、家族、性格、価値観、ライフスタイル等、リアルに設定します。ペルソナを設定することで、行動が予測できますから、どんな場面で情報を発信すればいいのかも分かるようになります。これは、第二ステージに於ける具体的行動に大きな影響を与えます。依頼人、相談者に「○○のスペシャリスト」という事をどんな方法で伝えるかという所にもつながって行きます。
ターゲットを決めるとブランディングもやり易くなるのです。

3.ポジショニング

ポジショニングは、ライバルとの相対関係に於いて、自分の優位性を見つける作業です。言いかえれば、相談依頼者に「No.1」だとイメージしてもらう事でもあります。
とにかく「No.1」と呼べそうなものを見つけて下さい。もし、なくても呼べそうなものを作って下さい。No.1とイメージされるものがあるだけで、ブランドの確立は容易になります。
誰もが1番は好きですし、覚えてもらい易くなります。
例えば「離婚訴訟勝実績が多い」とか「示談成立件数が多い」等を聞いたら、相談依頼者も、選び易くなるはずです。何でもそうですが、知識が乏しい商品サービスを購入する時は、とりあえずNo.1と呼ばれるものを購入すれば安心ではないですか? No.1にはそれだけの力があります。
ですから、No.1と呼ばれるようなポジションを見つけて下さい。

以上、「市場」「ターゲット」「ポジション」が決まれば、ブランドアイデンティティーが明確になって来るはずです。「誰に、どう見られたいか」も具体的にイメージできるはずです。

 

ブランドアイデンティティーが明確になれば、ブランド要素を使ってペルソナに伝える事を考えます。相談依頼者に、如何に伝えるかという事です。
ブランド要素は色々ありますが、代表的なものを挙げておきます。
①ロゴマーク ②ネーミング ③キャッチコピー ④パッケージ ⑤キャラクター 等
これらの要素を使って弁護士先生を相談依頼者に知っってもらう事になります。

ブランドアイデンティティーを基に「誰に、どう見られたいか」を具体的に表現してブランドを確立して下さい。

 

追記 弁護士に専門分野はない?!

日本弁護士連合会理事会は、弁護士業務において広告をする際に、専門分野についての言及は避けるべきという、ガイドラインを出しています。
専門と呼べる基準が明確でないうえ、弁護士が勝手に専門家を名乗ると、相談者、依頼人が根拠なく信用し、誤った方向へ導く可能性があるからのようです。

しかし一方で、ある弁護士によると、相談者依頼人から最も多い質問は「専門分野は何か?」という事のようです。
この事は、弁護士を必要とする相談依頼者からすれば、至極当然の得たい情報であるわけです。

相談者依頼人も、弁護士が様々な分野の案件を取り扱っているのは充分承知しているはずです。
それでも相談者依頼人は、自分の問題を解決してくれる弁護士の選択を間違わない為に、「専門」という選択基準が欲しいのです。

弁護士が「○○専門」と言った場合、相談者依頼人を誤った方向に導く危険性があるならば「○○専門」を違った表現にしなければなりません。
ある弁護士は「得意分野」という表現をされていました。その他にも専門性を客観的に見せる工夫として、実績の数字を明らかにしている弁護士もいます。
専門という言葉を使わないにしても、専門性を表現する事は、相談者依頼人と弁護士双方に利益をもたらす事になるのです。